第7話  後  家  竿    平成15年6月24日

庄内では、延べ竿が基本となって来たため、関東や関西のように幾本かの竹を使い軽くするために節を刳りぬき、竹の表皮を削り漆を塗って一組の竿を作ることはしない。基本的に竿は自然のままの一本の竹で作られている。

竿の調子が狂うとされて、嫌われてきた。選び選び抜かれた竹で作れた延べ竿は、竹本来の調子が出て来る。だから使い勝手から見ても最高であると思う。しかし、最近では、携帯性の問題から継竿にしてしまう。継竿にしてしまうと調子がどうしてもおかしくなってしまう。それでもプロの竿師の方は継竿に加工するときにそれを計算に入れ何とか合わせてしまう。

例えば関東や関西のヘラ竿に使用している竹そのもの一本では作られては居ない。穂先が使えないからである。その為、自然と穂先は削り竿となり、二番目、三番は何百、何千という素材の中から幾本か選び自分の好みの竿に仕上げるような工夫がなされてきた。


庄内では、始から自分の好みに合う竹を掘り出して根から穂先まで一本物の延べ竿を作った。一本物でないと、後家竿といわれ、馬鹿にされた。いくら、良い竹を選んで自分の調子に合わせたとしても竹本来の調子が出ないとされたからである。

今でも、庄内の伝統を継ぐ竿師の方達は絶対に後家竿は作らない。例外は、35年古の竹は穂先が枯れている場合がある。そんな時でも、穂先全部を変えることはなく、穂先の一部(最大でも30cm)のみ漆を使い継いで居る。名竿が中ほどが折れてしまった時は最悪である。補修できる場合は良いが、出来ないときは後家竿となってしまうからである。後家竿といっても簡単に出来るものではない。補修するまでにその名竿に見合う立派な良い竹を探して丁寧に補修するのであるから最低23年下手すれば4、5年はかかった。それでも、価値は半減以下となったのである。

最近のアマチュアの竿師の中には、自分の調子に合わせる為あえて後家竿を作っている人も居る様だ。伝統は伝統で尊重し、自分の調子に合わせるのも一つの合理的な判断だと思う。庄内竿と呼ばなければ良いのである。自分で「新庄内竿」とでも称してれば良い。お気に入りのマイロッドを作るのは釣師にとって夢なのである。素人竿師にとっても残念なことに、庄内竿に出来る苦竹の絶対本数が少ないのである。